普通、お酒を飲むと人は酔って気分が良くなりますよね。ところが、動物にも天然のアルコールを摂取するものがいて、特に発酵した果物や蜜からカロリーを得るために飲むケースが多いのです。でも、そのアルコール濃度はせいぜい4%以下。それ以上だと、ゾウでも鳥でも悪影響が出るものです。
ところが、オリエントスズメバチ(*Vespa orientalis*)は違いました!アジアやアフリカ、ヨーロッパに広く生息するこのスズメバチは、なんと濃度80%のエタノールでも代謝できるというのです。この実験を行ったのはイスラエルの研究チームで、スズメバチたちにアブサン並みの高濃度エタノール溶液を与えました。結果、彼らはフラフラにはなるものの、数分後には何事もなかったかのように元気に復活!巣作りまで再開するタフぶりには、研究者も驚きを隠せなかったとか。
この耐性の秘密は、スズメバチが酵母と持ちつ持たれつの関係を築いていることにあるようです。酵母はスズメバチの腹部で冬を越し、見返りにスズメバチが摂取した果物を発酵させてエネルギーを提供しています。この関係が長い進化の中で、スズメバチにアルコール耐性の遺伝子を増やさせたのかもしれません。
また、スズメバチがこれほどの高濃度アルコールに耐性がある理由として、抗菌作用のあるエタノールが健康維持や体の清潔に役立っているのではないかとも考えられています。特にオリエントスズメバチは腐肉を幼虫のために集めるため、細菌などに強い体が求められるのでしょう。
ただ、酔っぱらうのはオリエントスズメバチだけではありません。北米の「イエロージャケット」として知られるスズメバチたちも、秋になると果樹園で腐った果実に群がり、まっすぐ飛べなくなるほど酔っぱらいます。仲間同士で空中で衝突することもしばしば。
オリエントスズメバチの研究は始まったばかり。果たして彼らの酔わない秘密は解き明かされるのか、それとも意外な理由が隠されているのか。今後の研究が楽しみです!
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