世界の大都市でネズミが増加、最大の原因は温暖化?

最近、世界中の都市でネズミの数が増えているという研究結果が話題になっています。リッチモンド大学のジョナサン・リチャードソン教授率いるチームが、米国13都市とトロント(カナダ)、東京、アムステルダム(オランダ)の3都市で12年間にわたるネズミの目撃や捕獲データを分析しました。

その結果、対象となった16都市のうち11都市でネズミが大幅に増えていることが明らかになりました。 特にネズミの増加が顕著だったのは、米首都ワシントン、サンフランシスコ、トロント、ニューヨーク、アムステルダム。一方で、減少傾向が見られたのはニューオーリンズ、ルイビル、そして東京の3都市だけでした。東京はネズミとの戦いにある程度成功している都市として注目されています。 

 なぜネズミの数が増えているのでしょうか?リチャードソン教授によると、その最大の原因は気候変動です。温暖化によって冬の気温が上昇したため、ネズミが寒さで活動を制限される期間が短くなり、年間を通じて餌をあさり、繁殖する期間が長くなったといいます。さらに、温暖化によって植物が繁茂する期間が延び、ネズミが隠れる場所や餌となる資源も増えたそうです。 

 この問題はただの「嫌な話」では済みません。ネズミはインフラを破壊したり、配線をかじって火災を引き起こすことがあります。健康面でも、ネズミが50種類以上の病原菌を媒介することが確認されており、レプトスピラ症のような深刻な感染症の原因となることもあります。さらに、ネズミの存在が地域住民の心の健康に悪影響を与えるという指摘もあります。 特に首都ワシントンではネズミ問題が深刻で、ニューヨーク市に比べて1.5倍のペースでネズミが増加しています。固いプラスチック製のごみ箱にも、ネズミがかじった穴が開いてしまうほどです。昨年のワシントンの気温は観測史上最高を記録しました。 

 しかし、希望の光もあります。ネズミが減少した東京などの都市から学べる教訓があるとリチャードソン教授は指摘します。これらの都市では、自治体が住民に対してネズミを寄せ付けない方法を周知し、対策に予算を投入することで成果を上げたのです。ただ単に殺鼠剤で駆除するだけでは不十分で、生ごみや廃材の管理を徹底し、ネズミが居つかない環境作りに力を入れる必要があります。 そして、この問題はますます深刻化する可能性があります。温暖化が進む中、ネズミ対策を怠るとさらなる被害が広がる危険性があります。気候変動とネズミの増殖が都市生活に与える影響を軽視せず、今こそ持続可能な対策が求められているのです。

 結論として、気候変動がまさにネズミ界のボーナスステージを生み出しているような状況ですが、私たちが負けるわけにはいきません。気候に振り回されるのではなく、温暖化に適応しつつネズミとの共存ではなく「共闘」を避ける未来を目指しましょう。未来の都市は、ネズミがのさばる場所ではなく、すべての住民—もちろん人間限定で—が快適に暮らせる環境でなければなりません。 

 

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