【難病と診断ラグ──「患者の旅」の果てに】

「体調がずっとおかしい。でも、病院でははっきりとした病名が分からない」

 そんな不安を抱えながら、病院を転々とする――これは、難病患者の多くが経験する現実です。 

 アレクシオンファーマなどが行った分析によると、難病患者が初診から病名を告げられるまでの平均期間は3.4年(41.3カ月)。20疾患・約8000人のデータをたどった結果、診断まで5年以上かかった人が35%、さらに13%は9年以上もかかっていたとのこと。しかもその期間は年々長期化の傾向にあります。 

 この「診断ラグ」は、患者にとって大きな負担です。平均で69日間の通院、176万円の医療費がかかっており、これは一般患者の2.2倍の通院日数3.4倍の医療費にあたります。そして、約6割の患者が誤診を経験しているというデータもあります。

症状の出現から診断・治療に至るまでの道のりは、「ペイシェントジャーニー(患者の旅)」と呼ばれます。しかし、その旅はあまりにも長く、時に孤独です。

 聖マリアンナ医科大学の山野教授は、「治療法が見つかってきた難病も増えている。診断が早まれば、患者が受けられる恩恵は飛躍的に高まる」と語ります。専門医へつなぐネットワーク、AIによる画像診断の活用、新生児検査の拡充……改善の余地はまだまだあります。 

 病名が分かることは、治療のスタートラインに立つこと。 

その第一歩が、もう少し早く踏み出せる社会になりますように。

  旅の終わりが「希望の始まり」になるために。

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