「虫をもって虫を制す」――そんな戦国時代の兵法のような話が、今まさに畜産現場で実現しつつあります。
九州大学発のスタートアップ企業「Arthron(アルスロン)」が、畜産の天敵サシバエを撃退する“新兵器”として、在来の寄生蜂「キャメロンコガネコバチ(通称・キャメロン)」を活用するプロジェクトを立ち上げました。
サシバエは牛の血を吸い、ストレスによって牛の食欲や乳量が落ちるなど、畜産経営に深刻な影響を与える害虫。その媒介によって病気も広がる可能性があります。そんな厄介な虫に対抗するのが、キャメロンという名の小さな寄生蜂です。
このキャメロンは、日本全国に生息する在来種で、サシバエのさなぎの中に産卵し、その中で育ってハエを内部から駆除するという仕組み。しかも、育成に使われるのは安価に育てられるイエバエのさなぎ。コストパフォーマンスも抜群です。
薬剤に頼らず、しかも8〜9割も省力化できるとあって、労働力が課題となっている現場にも大きな希望。さらに、環境負荷が小さい点も高く評価されています。
実証実験では、特に堆肥の管理をしっかり行っている農場で顕著な効果がありました。地域単位での展開が進めば、持続可能な畜産経営の一助となるかもしれません。
この春、小さな虫が大きな希望を運んでくれました。農家の皆さん、そして牛たちにとっても、やさしい未来の幕開けかもしれませんね。
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