ある暑い夏、パプアニューギニアのサンゴ礁で、ひとつの小さな発見が大きな話題を呼びました。「あれ?この魚、前より小さくない?」。それが、博士課程の学生メリッサ・フェルステーフさんの直感でした。
何度測っても同じ結果。魚が縮んでいる――。最初は測定ミスを疑いましたが、実はそれが新たな現象の兆候だったのです。
彼女たちが調べていたのは、クマノミの一種「クラウンアネモネフィッシュ」。2023年、海洋熱波がこの海域を襲い、水温は通常よりも最大4℃も上昇。研究チームは6か月間にわたってクマノミを定期的に測定しました。
結果、メスの71%、オスの79%が一度は体が小さくなっていたのです。中には元に戻った個体もいれば、何度も縮んだり元に戻ったりする個体も。しかも、ペアで縮んだ魚の方が生存率が高い傾向までありました。
なぜクマノミは縮むのでしょうか?
ひとつの仮説は、イソギンチャクの成長が止まることで、そこに住み続けるためにクマノミの体も縮むというもの。また、小さくなることで酸素消費や餌の必要量が減り、厳しい環境でも生き延びやすくなるのかもしれません。
クマノミは元々、序列に応じて自らの成長を調整する特性を持っています。例えば、リーダーのメスが死ぬと、次のオスがメスに性転換して役割を引き継ぐほど。争いを避けるため、自分の体を小さく保つ能力もあるのです。
このような柔軟性が、温暖化が進む海でのサバイバルに繋がっている可能性があります。
ただし、小型化にはリスクも。体が小さいと、産む子どもの数も減ってしまうかもしれません。
「本当は、絶滅を記録するためじゃなく、彼らの生態を楽しむために調査していたんです」と、研究者たちは語ります。
変わりゆく気候に、私たちも変わる必要があるのかもしれませんね。
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