日本は治安がいい」は本当か?―見えない犯罪のリアル

「日本は世界でも有数の安全な国」――そんな定説に、ちょっと待ったをかける調査結果が発表されました。 

 法務省が実施した「犯罪被害実態(暗数)調査」によると、過去5年間で国民の約4人に1人(24.9%)が何らかの犯罪被害に遭っていたという衝撃の事実が浮かび上がりました。 

 その多くは警察に届け出られておらず、統計にも反映されない“暗数”。つまり、社会の目に触れないまま放置されていたのです。 

 なかでも急増しているのが「あおり運転」。なんと、自動車等を運転する世帯の16.5%が過去5年間で被害に遭ったと回答。ところが、警察に届けた人はたったの2.2%。 「大したことない」と泣き寝入りする人が多い一方、「証拠がない」「報復が怖い」など、声を上げられない理由も根深く存在します。 

 こうした背景には、警察への信頼の揺らぎや、犯罪立証の困難さ、そして社会全体の無関心があるのかもしれません。 一方、急増中の「カード詐欺」では、被害に遭った人のほとんどがカード会社に連絡し、警察には届けないという“新たな常識”が定着。 これは、金銭的な救済は得られても、事件として扱われないことで、社会全体としての対策が遅れがちになるリスクを孕んでいます。

 また、ネットいじめや個人情報の流出、DVや児童虐待といった「家庭や個人内で完結してしまう犯罪」は、ますます見えづらくなっています。 SNSの普及で可視化される暴力もあれば、逆に孤立の中で誰にも気づかれず進行する犯罪もあるのが現代社会の二面性です。

 実際に、「日本の治安は良い」と感じている人の割合も減少傾向に。人々の“体感治安”は悪化しているのが現実です。 これからの社会には、警察の強化だけでなく、誰もが「相談してもいい」と思える空気づくり、デジタル社会に即したルールの整備、そしてコミュニティの再構築が欠かせません。 

 見えない犯罪がこれだけ増えた今、「何もない」のではなく「見えていない」だけかもしれません。

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