見えない「海の侵略者」――バラスト水が運ぶ生態系の危機

皆さん、貨物船が海を走るとき、ただ荷物を運んでいるだけだと思っていませんか? 

実は、その船底には「見えない侵略者」がこっそり乗船しているのです。 

 その正体は――バラスト水に混ざって運ばれる外来生物。 

 貨物を積んでいない船は不安定になるため、船体を安定させる目的で大量の海水を取り込む仕組みを持っています。この海水こそが「バラスト水」。問題は、このときに一緒に吸い込まれる数えきれないほどの生き物たちです。 

 ・プランクトン 

・魚の卵や幼生 

・細菌やウイルス

 年間30~50億トンものバラスト水が世界を行き来し、数千~数億もの生物が“無料の乗船チケット”で旅をしていると言われています。

  外来種がもたらす脅威 

日本の海でも外来種問題は進行中。代表例が「ムラサキイガイ」。 

地中海原産のこの貝は、養殖カキや漁網に付着し、配管を詰まらせるなど、漁業やインフラに大打撃を与えています。 

 さらに恐ろしいのは病原菌。コレラ菌や大腸菌がバラスト水に混ざり、人間の健康や水産業にまで悪影響を及ぼすリスクがあります。

 国際社会の対策

こうした脅威に対抗するため、2004年に国際海事機関(IMO)が「バラスト水管理条約」を採択。2017年に発効し、世界中の船に「バラスト水処理装置」の搭載を義務付けました。 

 処理方法は、 

・紫外線で殺菌 

・薬剤で処理 

・オゾンや電気分解で無害化 など。技術的には進歩しているものの、船内スペースやコスト面でまだまだ課題が残っています。

 “見えない侵略者”とどう向き合うか

国際ルールや技術開発で外来種の侵入リスクは確実に減るはずです。

 しかし本当に大切なのは、私たち一人ひとりが「海のつながり」を意識すること。海は国境を持ちません。

だからこそ、国際協力と同時に、環境意識が欠かせないのです。 

「海の向こうから来るのは輸入品だけじゃない。時には“ムラサキイガイ”も一緒に届く――。Amazonより早く、しかも送料無料で。」 

 

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