数学界には「未解決問題」と呼ばれる、研究者を何十年も悩ませる難題がいくつもあります。その中でも特に注目を集めてきたのが **「ABC予想」**。
2012年8月30日、京都大学の数学者・望月新一教授が「ABC予想を証明した」とする論文をインターネット上に発表したとき、世界中のメディアが大騒ぎになりました。
当時は「ついに陥落!」とまで言われたこの難問ですが、13年たった今も論争は続いています。では実際、何が起きているのでしょうか?
そもそも「ABC予想」とは?
ABC予想は1985年に登場した整数論の難問で、足し算とかけ算に関わる非常に深い性質を扱っています。数学界では「最も重要な未解決問題」とも評されてきました。
望月教授はこの証明に「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)」という独自の枠組みを用いました。しかしその理論があまりにも難解で、最初に理解できた人は世界でわずか3人…。数学者たちからは「何が分からないのかすら分からない」との声も。
理解されない理論
2015年にはイギリスで大規模な勉強会が開催されましたが、参加者の多くは「迷子になった」と振り返ります。理論の書き換えや整理を求める声は強く、「最も悪名高い証明」とまで言われることに。
さらに査読の過程では「論理的な飛躍がある」との指摘もありました。
2018年には懐疑派との直接討論が行われましたが、互いの主張は平行線のまま決裂。ドイツの著名数学者ピーター・ショルツ教授は「深刻な欠陥があり、修正では済まない」と批判。一方で望月教授は「初歩的な理論を理解していない」と反論しました。
京都では定理、世界では予想
2020年、京大の学術誌が論文を受理し、形式上は「証明」と認められました。ところが国際的には依然として評価は定まらず、数学賞の受賞もなく、研究者コミュニティーも京都大学に限られているのが現状です。
ある数学者は皮肉を込めてこう言います。
「ABC予想は京都では定理だが、それ以外では予想である」
結論:まだまだ決着はつかない
数学の世界では「多くの専門家が納得して初めて“定理”と認められる」もの。今のところ、ABC予想はその境界線に立ったまま動けずにいます。
証明として受け入れられるのか、それとも歴史的な誤解として幕を閉じるのか――結論はまだまだ先になりそうです。
結局のところ、ABC予想は「証明されたのか?」と聞かれても、答えはこう。
「たぶん、A地点では証明済み、B地点では未解決、C地点ではよく分からない」。
まさにABCな状態、というわけですね😅
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