人間の世界にも“上下関係”があるように、マウスの社会にも「勝者」と「敗者」が存在します。
強いマウスは餌にも早くありつけるし、良い縄張りも手に入れる。けれど、面白いことに、その序列は体の大きさだけで決まるわけではないんです。
OIST(沖縄科学技術大学院大学)の研究チームが、マウスの「勝ちグセ」「負けグセ」を生み出す脳のスイッチを突き止めたというのです!
🧩 チューブでガチ対決!? 「優位性チューブテスト」
実験はとてもシンプル。
細いチューブの両端から2匹の雄マウスを入れて、真ん中で“押し合い”をさせます。押し勝ったほうが勝者。これを何日も繰り返し、「勝ち続けるマウス」と「負け続けるマウス」を選び出しました。
さらに、勝者同士・敗者同士をそれぞれ別のケージで戦わせたところ
🧠 過去の勝ち負けが、その後の勝敗に影響する!
つまり、
* 一度勝つと次も勝ちやすくなる「勝者効果」
* 一度負けると次も負けやすくなる「敗者効果」
が、マウス社会にも存在していたのです。
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### ⚙️ 「負けグセ」を消す脳のスイッチを発見!
研究チームは、意思決定に関わる脳の部位「**大脳基底核の背内側線条体**」に注目しました。
この中にある「**コリン作動性介在ニューロン**」を除去して同じテストを実施したところ――
なんと、「敗者効果」が**消えた**のです!
負けても、もう負けを引きずらなくなった。つまり、**“負けグセ”が消えたマウス**が誕生しました。
一方で、「勝者効果」はそのまま。
どうやら“勝ちグセ”と“負けグセ”は、脳の別ルートで動いているようです。
💭 「安全運転モード」としての“負けグセ”
この結果から、研究チームはこう結論づけています。
「敗者効果」は、慎重に行動を判断する“安全運転モード”のような仕組み。
一方で、「勝者効果」は“うまくいった行動を繰り返す”報酬学習の仕組み。
つまり、負けを経験したマウスは「次は無理をしない」という判断をしやすくなる。
それが社会的に生き延びるための戦略だったのかもしれません。
🧍♀️ 私たち人間にも関係ある?
OISTのマオチン・シュー博士はこう語ります。
> 「人間の社会はマウスよりもはるかに複雑です。家庭で優位でも、職場ではそうでないこともあります」
人間の脳もマウスと構造的に共通する部分が多く、こうした研究が将来、“人間の立ち直り方”や“挑戦と慎重さのバランス”を理解する手がかりになるかもしれません。
🐭 まとめ:あなたの脳のスイッチ、今どちら?
次に誰かと意見がぶつかったとき、ちょっと立ち止まってみてください。
そのとき自分の中の“スイッチ”はどちらに入っているでしょうか?
挑戦モード?それとも安全運転モード?
負けグセも、見方を変えれば「生き延びるための知恵」なのかもしれませんね。
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