私たちが何気なく眺めている古文書や昔の写真。
そこに刻まれているのは、その時代を生きた人々の息づかいです。
――もしそれが、たった1匹の虫によって失われるとしたら?
いま全国の博物館で問題になっているのが、
外来種の害虫 「ニュウハクシミ(紙魚)」 です。
今回は、北海道博物館での奮闘をブログ風にまとめました。
■ 紙を食べる虫、その名も「紙魚」
ニュウハクシミは体長およそ10ミリ。
銀色に光る細長い体で、漢字ではそのまま「紙の魚」と書きます。
その名の通り、大好物は――紙。
* 古文書
* 和紙・洋紙
* 写真
* 壁紙
なんと、文字や絵そのものを食べてしまうのです。
文化財にとっては、まさに天敵。
■ たった1匹が、3年後に2万匹?
さらに厄介なのが繁殖力。
この虫、メスだけで増えることが分かっています。
つまり、たった1匹でも繁殖可能。
試算では…
* 1年後 → 約130匹
* 3年後 → 約2万匹
まさに爆発的増加。
国内では4年前に初確認。
いまでは全国19都道府県に拡大しています。
■ 撲滅できない現実
北海道博物館では100個以上のトラップを設置。
それでも完全撲滅には至っていません。
なぜなら――
✔ 小さくて見つけにくい
✔ 段ボールなどに紛れ込みやすい
✔ 一度入り込むと根絶が難しい
文化財は「一点モノ」。
やり直しがききません。
■ 学芸員が突き止めた“弱点”
ここで希望の光。
北海道博物館の高橋学芸員が発見したのは、
ニュウハクシミは ツルツルした面を登れないという弱点。
そこで考案したのが――
「ツルツル防御台」
断熱材の台に、ペットボトルの底を取り付けたシンプル構造。
床と資料の間にこれを設置すると、
虫がロッククライミング状態になり、上がれない。
しかも材料は安価。
全国の博物館でも導入しやすい。
この研究は科学賞も受賞しました。
情熱が、文化を守る盾になったのです。
■ ほかにもある撃退作戦
現在検討されている対策は――
① 特製毒餌トラップ
② 二酸化炭素による殺虫
③ 低温処理(10℃以下で死滅)
しかし…
冷やせば結露→カビの危険
小さすぎて完全把握が困難
決定打はまだありません。
■ 文化財を守るのは“人”
多くの博物館は予算が厳しいのが現実。
現場を支えているのは、学芸員の知識と熱意です。
文化財は単なる「古い紙」ではありません。
その土地の歴史
そこに生きた人々の記憶
二度と戻らない時間
それを守る戦いが、今も静かに続いています。
■ 私たちにできること
実はニュウハクシミは、家庭にも侵入する可能性があります。
* 段ボールを長期保管しない
* 本棚や押し入れの湿度管理
* 古紙の整理
小さな心がけが、大切な記録を守ります。
最後に
体長10ミリの虫と、178センチの学芸員。
スケールは違っても、守りたいものは同じ。
「その時代、その地域の歴史を奪わせない」
文化を守る戦いは、派手ではありません。
でも確かに、未来へとつながっています。
次に博物館を訪れたとき、
展示の裏で続く努力にも、少し思いを巡らせてみてください。
歴史は、守る人がいてこそ残るのです。
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