「太っているのは自己管理ができていないから」
そんな言葉を、どこかで聞いたことはないでしょうか。
日本でも海外でも、肥満に対する偏見(スティグマ)は根強く残っています。しかし実は、「肥満」と「肥満症」はまったく別のものです。
神戸大学大学院の小川渉教授(日本肥満学会常務理事)は、こう強調します。
> 「両者をきちんと区別しないと、偏見を生むだけでなく、本当に治療が必要な人の妨げになってしまう」
今日は、この“見えにくい違い”について考えてみたいと思います。
■ 肥満=悪? その思い込み
肥満の人に向けられる視線には、こんなものがあります。
* 「食べすぎなのでは?」
* 「運動していないのでは?」
* 「だらしない生活をしているのでは?」
でも、本当にそれだけでしょうか。
肥満には、
* 遺伝的要因
* 体質
* 職場環境
* 生活環境
* 強いストレス
など、さまざまな背景があります。
小川教授は言います。
> 「一言で肥満を“悪”と決めつけるのは差別ではないか」
体型は“性格”ではありません。
見た目だけで人生の背景まで決めつけることはできないのです。
■ 「肥満」と「肥満症」は違う
ここがとても大切なポイントです。
日本では BMI25以上が「肥満」と定義されます(欧米ではBMI30以上)。
しかし「肥満症」は別です。
▶ 肥満症とは?
BMI25以上に加えて、
* 高血圧
* 糖尿病
* 脂質異常症
* 関節症
* 月経不順
など、11以上の健康障害のいずれかを伴う状態を指します。
つまり、
体重が多いことそのものが問題なのではなく、健康障害があるかどうかが重要なのです。
特に日本人は内臓脂肪が蓄積しやすい傾向があると言われています。内臓脂肪は皮下脂肪よりも健康リスクが高いことが医学的にも示されています。
だからこそ、「見た目」ではなく「健康状態」で考える必要があるのです。
■ 偏見をなくすための取り組み
製薬企業の
* 日本イーライリリー
* 田辺ファーマ
は、肥満への偏見をなくすためにユニークなツールを作りました。
●「みえない偏見カード」
日常に潜む思い込みを可視化し、参加者同士で対話するカードゲーム。
●「みえない要因すごろく」
身体的・心理的・環境・社会的な要因を集めながら進むボードゲーム。
こうした取り組みは、2026年3月4日の
世界肥満デー
に向けてWeb公開もされています。
「知ること」こそが、偏見をなくす第一歩なのかもしれません。
■ 肥満症の治療という選択
もし肥満が原因で健康障害が起きているなら、治療という選択肢があります。
* 食事療法
* 運動療法
* 行動療法
* 薬物療法
* 手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除など)
特に近年は、食欲を抑える薬も登場しています。
ある患者さんはこう語ったそうです。
> 「会食の席で、頼んでもいないのに大盛りが置かれる。太っているからだと思うけれど、とても嫌だ」
この言葉は、体の問題だけでなく“心の傷”を物語っています。
■ 大切なのは「分けて考えること」
* 見た目の問題なのか
* 健康障害の問題なのか
この二つを混同しないこと。
痩せるべきかどうかは、「他人の価値観」ではなく、「健康状態」で決まるべきです。
肥満=悪ではありません。
肥満症=治療が必要な病気です。
この違いを理解することが、誰かを傷つけない社会につながるのではないでしょうか。
最後に。
体型は、その人の人生の一部にすぎません。
私たちが本当に見るべきなのは「体重」ではなく「健康」と「尊厳」なのかもしれません。
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