「パパ、なんかいるよ!」
3月21日、千葉県南房総市の富浦新港。
魚釣りに来ていた親子が、思いがけない出会いを果たしました。
見つけたのは、なんと深海にすむユウレイイカ。
しかも、生きたまま――。
■ 発見者は4歳の釣り名人?
ユウレイイカを見つけたのは、南房総市在住の武半朔弥(たけば・さくや)さん、4歳。
父・琢也さんと釣りをしていたところ、港につながれた漁船の近くに、海面をふわりと漂うイカを発見しました。
タモ網ですくい上げてみると、いつも釣れるアオリイカやコウイカとは様子が違う――。
琢也さんがスマートフォンで調べたところ、どうやら「ユウレイイカ」にそっくり。
その名の通り、胴体は透き通り、内臓が見えるほど透明。耳のように丸いヒレをもち、足先はほんのり赤みを帯びています。
まるで深海から迷い込んできた“幽霊”のようでした。
■ 十数年に一度の目撃例
確認を行ったのは、勝浦市にある
千葉県立中央博物館分館 海の博物館 の柳研介主任上席研究員。
画像を見て、ユウレイイカであることを確認しました。
ユウレイイカは本州中部以南の水深数百メートルに生息する深海性のイカ。
房総沖の深海にもいるとされていますが、人の目に触れることはめったにありません。
博物館に情報が寄せられるのは、十数年に一度程度。
しかも、生きた状態で回収されるのは非常に珍しいとのこと。
なぜ浅瀬にいたのかは不明ですが、何らかの理由で浮上してきた可能性があるそうです。
■ 親子の迷いと決断
自宅に持ち帰った親子は、発泡スチロール箱に海水を入れ、エアレーションで酸欠を防ぐなど丁寧に対応しました。
しかし、イカはあまり動かず、弱っている様子。
「貴重なものかもしれない。でも、どうすればいいのか……」
悩んだ末、博物館へ連絡。
その日のうちに引き渡され、標本として保存されることになりました。
琢也さんは、ほっと胸をなで下ろしたといいます。
■ 深海から届いた小さなメッセージ
ユウレイイカには、目の周りや足、臓器に発光器があり、体を発光させることで外敵から身を守る「カウンターシェーディング」という仕組みを持っています。
光る透明な体――。
想像するだけで神秘的ですね。
今回の出来事は、偶然の発見でした。
でも、その偶然を大切に扱った親子の判断が、貴重な学術資料へとつながりました。
もしかすると、あの日の港で、
いちばん輝いていたのはユウレイイカではなく、
小さな観察眼をもった4歳の少年だったのかもしれません。
釣りの思い出は、大物が釣れた日だけではありません。
海はときどき、物語をくれる場所なのですね。
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